私の恋した誘拐犯【完】
だからこそ、聞くのが怖かった。



「教えて、その理由」



強い秋風がヒュウッと吹き、2人の髪を揺らしていく。



キョンタが口を開いた。



「たぶん拓巳は…有栖の「キョンタ。それはお前の口から言うことじゃねーよ」



屋上の扉が開く音がして、背後から聞き慣れた声。



ピクッと肩が上がった。



「あ、拓巳おっせーよ」



「寝坊した」



特別悪びれる様子もないキョンタは、そう言いながら私の横を通りたくちゃんの元へ。
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