私の恋した誘拐犯【完】
私は振り返ることができずにいる。



たくちゃんの、あの冷めた目を見るのが怖かった。



またそんな目で見られるのかと思うと、どうしても振り向けなかった。



「キョンタ、おまえ余計なこと言おうとしてたろ」



「いやほら、拓巳が遅いから…」



「関係ねーだろ。…もういいから戻ってろよ」



「ほーい」



バタン、と屋上の扉が閉まる音が響く。



どうやらキョンタは教室に戻ったらしい。
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