私の恋した誘拐犯【完】
私はただ、ゆっくりと首を縦に振ることしかできず。



たくちゃんの小さな溜め息が聞こえた。



「ならなんで隠してたんだよ。…知ってたら俺、あんなこと…」



「諦めようって…思ってたの」



洋くんが好きだと、胸を張って言うことができない。



そんな関係を望んではいけない。



「諦めるってそんな簡単なことじゃないだろ」



「簡単じゃないけど…私じゃダメって分かってるからさ」



たくちゃんにこんなことを言うために学校に来たわけではないのに。



こんなこと聞かされても、たくちゃんだって困るだけだ。
< 215 / 530 >

この作品をシェア

pagetop