私の恋した誘拐犯【完】
(そういえば、取るときはテキトーに飛び出してる本を取ったっけな…)



「ちーちゃん?何してるの?」



ピョンピョンと跳ねる私を見た洋くんは、不思議に思ったのかこちらへ近づいてくる。



「あ、ううん!今行くから待っ___」



その時だった。



本棚に乗っかるようにして本をしまおうとした私に、グラリと本棚が傾いたのだ。



咄嗟に目を瞑り、今から自分に降りかかるだろう痛みに身構える。



「…」



けれど、しばらく経っても痛みどころか本棚が倒れたような音も気配も感じない。
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