私の恋した誘拐犯【完】
「ちーちゃん、怪我ない?」



「わ、私は平気だよ…それより洋くんの方こそ…」



まるで私を抱えるかのように守ってくれた洋くんに、涙が浮かんでしまった。



学さんが洋くんの腕に倒れた本棚を急いで起こす。



「俺も大丈夫だよ。ちょっと擦りむいたくらい」



本棚を支えていた方の腕には、大きな切り傷。



どうやら棚から飛び出ていた木の破片で切ってしまったようだ。



「ちょっとじゃないよ……、ごめんね洋くん…」



大怪我ではなかったにしろ、その切り傷が深かったのか血が流れ落ちている。
< 235 / 530 >

この作品をシェア

pagetop