私の恋した誘拐犯【完】
私は洋くんの手に引かれて、本屋を出た。



家に着いた頃には20時を30分ほど過ぎていて、洋くんが簡単な夕ご飯を作ってくれている。



その背中を見れば見るほど、寂しく切ない感情が湧いて。



「洋くん〜」



ギュッと、その背中にくっついた。



「わ、ちょっとちーちゃん…ご飯作れないよ」



「ん」



グリグリとその背中に頭を押しつけると、洋くんが笑ってくれるのを知っている。



「ちょ、くすぐった…っ」



(こんなに好きなのに、どうにもなれないなんてなぁ…)
< 238 / 530 >

この作品をシェア

pagetop