私の恋した誘拐犯【完】
「俺と付き合えよ」



サァッと、強く吹いた風が2人の髪をさらってく。



数秒の沈黙。



先に口を開いたのは私だった。



「やだなたくちゃん。またどうせ冗談でしょ?」



そう笑いかけたはずなのに、たくちゃんはニコリともしなくて。



その目は真っ直ぐに私を捉えていて離そうとはしなかった。



「…冗談、だよね…」



気づいてた。



その目に冗談の色がまったく見えていなかったこと。
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