私の恋した誘拐犯【完】
「忘れさせてやりたいんだよ」



たくちゃんはそんな私を優しく見つめて



「他の誰かじゃなくて俺が」



口元に微かな笑みを浮かべて見せた。



「簡単なことじゃないことくらい俺も分かってるよ。それでもチャンスがほしい」



「チャンス…?」



「千織が…俺を好きになるかもしれないチャンス」



いつもより穏やかな口調。



私を真っ直ぐに見つめるたくちゃんの目が綺麗すぎて



そっと目を逸らした。
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