私の恋した誘拐犯【完】
それでも、私の心の中にはまだ洋くんがいて。



完全に消せていない洋くんの姿は、きっとずっとチラチラする。



諦めたという肩書き、まだ好きだという事実。



「…頼むよ千織」



私には、たくちゃんと付き合うなんて大それたことできない。



たくちゃんはもっと素敵な人、もっと芯の強い人。



そんな女性が合うと思うのに。



私は意を決して、小さく口を開いた。



「たくちゃん私「好きなんだよ」



だけどそんな私の言葉は、辛そうに表情を歪めるたくちゃんの言葉に遮られる。
< 287 / 530 >

この作品をシェア

pagetop