私の恋した誘拐犯【完】
「悪かったな、寒いのに長話して」



私が頷いたのを見たたくちゃんは、そう言って再び歩き出した。



「ううん、大丈夫だよ」



すぐそこに私の家が見えている。



「たくちゃん、ここで大丈夫だよ。ありがとね送ってくれて」



「おう。風邪引くなよ」



ポンポン、と私の頭を優しく叩いたたくちゃん。



その優しさに特別な感情があるとかないとか



「気をつけてね。また明日」



そういうの関係なしに、たくちゃんはきっと今のまま優しい。



「ん、また明日」



元来た道をバイクで戻っていくたくちゃんの背中を、私はしばらく見つめていた。
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