私の恋した誘拐犯【完】
それからその日は、もちろんいつも通り1日が過ぎて行った。



次の日がどんなに大切な日だろうと、今日という1日が変わることは決してない。



「千織」



放課後、帰ろうとしていた私をたくちゃんが呼び止めた。



帰る用意すらも鈍臭い私。



教室はガランとしていた。



「あれ、どしたのたくちゃん。帰んないの?」



「明日勝つから」



たくちゃんが言いたいのはきっとそれだけではない。



けれどたくちゃんは、今伝えるべき言葉はそれだけで充分だと分かってる。
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