私の恋した誘拐犯【完】
壁のある2人の会話。



自分の声のトーンが他人と話すときと同じで嫌になる。



車内に響く音楽。



響いてるはずなのに、痛いほどの沈黙が流れている。



「急にごめん」



そんな沈黙を破ったのは洋くんだった。



「…え…?」



「迎え。…拓巳くんと帰るつもりだったでしょ?」



信号が赤に変わり、洋くんは言葉に遅れて顔を向ける。



「何でそれ…」



「さっき拓巳くんが出ていくのが丁度見えてね」
< 301 / 530 >

この作品をシェア

pagetop