私の恋した誘拐犯【完】
分かってるから望まない。



今のままで、充分幸せなはずなんだ。



しばらくしてお風呂から上がると、洋くんは眼鏡をかけて、本を読んでいた。



眼鏡をかけた洋くんのギャップと言ったら、私はいつものぼせてしまうほど。



「洋くん、お風呂上がったよ」



私の声に、洋くんの返事はない。



よほど集中しているのだろう。



「洋くん」



もう一度呼びかけてみても、洋くんは本に釘付けで、私には気づいていないようだ。



しめしめと、私は悪戯っ子の心そのもので、ソロリソロリ洋くんに近づく。
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