私の恋した誘拐犯【完】
「ちーちゃんもう少し前においで」



「前?」



ちょこちょこ、とおぼつかない足取りで前へと進む。



「もう少し前」



すぐ近くに洋くんの声が聞こえ、ヨロヨロと足を止めた。



「もっと前だよちーちゃん」



「え?でも洋くん近くに…」



「いいからもっと前」



すぐ目の前で声が聞こえるのに、洋くんはもっと前だと言う。
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