私の恋した誘拐犯【完】
私の顔は洋くんの両手で挟み込まれ、離れることもできない。



「…よ、…っ洋、くん…」



やっと出せた声は、恥ずかしいくらい震えていた。



「いいの?イタズラしても」



「と、とと、とりあえず…っ、離して…」



グッと洋くんを押し返すと、思ったよりも簡単に体は離れた。



ペタン、と床に座り込む私を洋くんはただ見下ろしている。



「よ、洋くん…イタズラの度がすぎるよ、もう…」



「まだイタズラしてないんだけど」



見上げた洋くんの顔は、まるでこの状況を楽しんでるかのように妖しく笑っていて。
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