私の恋した誘拐犯【完】
気づかれないように近くまで行くことに成功し、ニンマリと笑みを零す私。



そして、チュッと洋くんの頰にキスをした。



「お風呂上がったよ洋くん」



いつもの悪戯だ。



そういつもの。



洋くんは固まったまま、私を見つめていた。



いつもの反応ではないことは、そんな洋くんを見れば一目瞭然。



「あ、あれ?洋くん?」



洋くんの目が、一瞬、一瞬だけだったけど、私の口元を捉えた気がした。



その一瞬見せた伏し目がちな表情に、どきっと心臓が鳴る。
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