私の恋した誘拐犯【完】
「よ、洋くん…?」



もう一度呼びかけると、ハッと洋くんがやっと私を見る。



「髪、濡れてるから、ちゃんと拭いてね」



「あ、う、うん」



どこかいつもと違う洋くんは、私にそう言うと、そそくさとお風呂へ行ってしまった。



「な、なんだったんだ…」



眼鏡の奥に見えた、あの伏し目がちな表情が忘れられなくて。



あんなに色っぽい顔、洋くんするんだ…なんて頭がぽーっとする。



頰にキスして驚かせるなんて悪戯、これが初めてじゃないのに。



あんな反応されたら、次からできなくなる。
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