私の恋した誘拐犯【完】
「でも私…っ」



言いかけたところで、たくちゃんは立ち上がった。



「ジュースなくなったろ。持ってくる」



私のコップの中にジュースがないのを確認して、まるでこの場の空気から逃げるように。



「ねぇたくちゃん待っ___」



私も立ち上がり、その袖を掴んだときだった。



ドンっと背中に衝撃を感じて、目を開けるとたくちゃんが目の前に。



「た、たくちゃん…?」



両手を掴まれ、壁に押し付けられていることに気づいたのはしばらく経ってからだった。



下を向くたくちゃんの表情は見えない。
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