私の恋した誘拐犯【完】
私はたくちゃんのことなんて、何も分かってない。



「…分かったら、もう何も言うな」



パッと手を離したたくちゃんは、そのまま部屋を出て行った。



「…っ」



力が抜けてその場にペタン、と座り込む。



たくちゃんのことは傷つけたくない。



傷つけないためには、私の想いを捨てること。



捨てられずにいる今、下手な嘘はたくちゃんを傷つけてしまう。



『嘘が1番苦しいんだって…』



中途半端な気持ちでいると、相手と自分を失ってしまいそうで



怖い__



痛いくらい静かな部屋に、時計の音が響き消えて行った。
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