私の恋した誘拐犯【完】
嫌で嫌で仕方なくても、反抗する気もなかったし、できなかった。



そんなある朝の登校途中。



18歳だった彼は現れた。



私の前に立ちふさがり、無理やり引っ張るでも、連れてくでもなく



ただそっと、私に右手を差し出してくれた。



この人は誰なのか



どこに連れて行こうとしてるのか



今思えば、当たり前な疑問も、このときの私には微塵もなかったのだ。



10歳だった私は、その右手をぎゅっと握って



彼の行くままに、歩いたのを覚えている。
< 4 / 530 >

この作品をシェア

pagetop