私の恋した誘拐犯【完】
どうして急に抱きしめてきたのかも、私には到底分からない。



ただドキドキとした心臓の音だけが私を揺らす。



ゆっくりと体を離した洋くんの顔は、どこか余裕をなくしていて。



「洋くん…?」



「急にごめんね。…ちょっと寂しくなっちゃって」



「寂しいって…」



「ずっと洋くん洋くんって言ってたのにって…なんか気持ち悪いな俺。ごめんね」



目を合わせない洋くん。



なんとなくわかる。



本音ではないこと。
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