私の恋した誘拐犯【完】
「でもあの時は俺も若かったなって思うよ今じゃ」



「そうだよね〜、もう20歳も折り返しが来ちゃうもんね〜」



「こらやめなさい」



私の頭を軽く小突いた洋くんが笑う。



私もへへへと笑いながら、少し間を置いて口を開いた。



「今は?」



「今?って?」



「好きな人」



洋くんの顔から心なしか笑顔が減ってくような気がした。



一瞬の沈黙だったのか、しばらくの沈黙だったのかは分からない。
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