私の恋した誘拐犯【完】
だけどもう、私は泣かない。



「思い詰めなくてもいいよ。俺たちそんな話しで離れてくような人間じゃないし」



キョンタがいつもの調子で笑って、私に元気をくれる。



「あの男が何者だとか、千織が実は捨てられた子だったとかさあ」



たくちゃんが頭をガシガシ掻きながら、私の隣へと寄って



「その過去が今の千織を作ってんなら、俺はその過去にさえ感謝するって」



な?と笑ってくれるたくちゃん。



みんなの優しさは言うまでもないけれど、言葉一つ一つが温かくて。



どれも大切にしていたくて、



忘れたくなくて。
< 474 / 530 >

この作品をシェア

pagetop