私の恋した誘拐犯【完】
「気づかされることいっぱいあるよほんと」



「なら戻ってやって下さい。あいつ待ってるから」



「うん。…でもひとつだけ」



そいつはそう言うと、一度後ろを振り向いてから俺を見た。



その顔には微笑みが浮かんでいる。



「拓巳くんが幸せを与えられなかったなんてことはない。ちーちゃんは拓巳くんが変えてくれたんだから」



不覚にも涙が出そうになった。



グッと我慢する俺に背を向けたそいつは



「嫉妬するほどね」



そうトドメの一言を吐いて、家の中へと消えていった。
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