私の恋した誘拐犯【完】
お風呂から出ると、洋くんがいつものように本を読んでいた。



椅子に座って、メガネをかけて、真剣に文字を追う瞳。



その本は、ページ数が残り少ないことを知らせていた。



「洋くん」



呼びかけに返ってくる声はない。



綺麗な横顔がただ本を見ている。



「…洋くん」



私は無意識に洋くんの元へと踏み出していた。
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