きら★きら
 一方、咲楽はというと未だベッドの中で熟睡していた。
 どちらかというと、人付き合いの下手な性格で、飲みに行くことも希な彼は、すっかり疲れ切っていたのだ。
「咲楽。そろそろ起きないと、仕事に差し支えるぞ」
 久しぶりに聞く同居人の声に、咲楽は飛び起きた。
「まぁくん!いつ帰ったの!?」
「昨日の夜にね。お前をベッドまで運ぶの、大変だったんだからな。川原と二人掛かりだもん」
「ごめん。起こしてくれても良かったのに」
「簡単に起きたことないだろ。それよりも、起きなさいっ!」
「起きるよ。すぐ起きる。だから、今夜は待ってて。寄り道しないで帰るから」
「分かったから。顔、洗ってこいよ」
 洗面所に向かう咲楽の背中を見ながら、同居人である名護正明は苦笑した。
 出会った頃から少しも変わらない子供っぽさと、大きな瞳が自分だけを見ている。
 ただひたすらに慕ってくる咲楽を可愛いとも思う。
 けれど、可愛いと思う心とは裏腹に、名護はこの頃、二人でいる時間が息苦しく感じるようになっていた。
 咲楽といることで心やすらぐ分、訳の分からない息苦しさを感じる自分は、贅沢なのだろうか。
 そんな名護の溜息を、咲楽は知らない。
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