asagao
静けさの向こう側
「次、いつ会える?」
《多分、…来月》
「来月?!来月まで待つの?!」
ここで我慢できんのがあたしの悪い癖。
いや、違う。
こうなるのは誰だってそうやと思う・・・遠距離恋愛なら。
《でも仕事だから》
それも聞き飽きた。
仕事で会えんのはわかってる。
わかってるけど、わかってるけど、わかってるけど会えんのは寂しすぎる。
「わかった。次、期待してる」
寂しいけど、物分りのいいフリをしたあたしはそう言うて電話を切る。
大丈夫、今までだってちゃんと辛抱できた。
だから我慢は出来る。
絶対泣いたりせん。
でも、
「謙吾…」
声を聞けば聞くほど会いたくなって愛おしくなるのは止めようがない。
『あたし、結婚する』
そう聞いたのはもう2年も前。
親友の涼が運命的な出会いからバンドのボーカリストと恋に落ちて2年も経たん間に結婚を決めた。
あたしと同じ遠距離恋愛を経ての結婚。
離れてるから一緒にいたくて結婚したって話。
涼は不安がってたけど、あたしにとっては羨ましい限りやった。
同じ遠距離恋愛でたった2年で結婚。
それに比べてあたし達は何年も付き合ってんのに結婚の話も出てけぇへん。
だからって自分から“そろそろ…”なんて口が裂けても言えん。
そんなこと言わんくても、遠距離でもあたしを好きでいてくれてるのはちゃんとわかってるし、会えんくても突然会いに来てくれたりする。
だから見えんくて知らんことが多いことが不安になるだけで、気持ちが離れてる気はせん。
でも、それが寂しさに繋がらんわけじゃない。
いつだってあたしは寂しくて恋しくて、いつも会いたい衝動に駆られる。