あなただけの騎士
破滅の鬼、現る
ーーガチャーー
そっと靴を脱ぎ、元から壁に埋め込まれている棚にしまった。
そのまま廊下をまっすぐ進む。
明かりのついている部屋のドアを開けた。
そっと壁にかかっている時計を見ると短い針があとすこしで一番上に登るところだった。
「ったく、何やってんだよ、華恋。風邪引くっつーの」
明かりのついている部屋…リビングのソファーに座って俺を待っていたのは華恋。
俺の可愛い妹だ。
俺は一人暮らしで家族とは別のところで暮らしている。
前にも言ったが、別に不幸な訳では無い。
両親は海外で仕事。
本当は家族と一緒に住もうとしてたんだけど、俺が騎士団に入ったから迷惑をかけるかもしれない。そう思って俺だけ別で暮らしているんだ。
「ん〜…、きいちゃん?」
俺の家族はみんな俺をきいちゃん、と呼ぶ。
…あいつ以外はな。
ハルキのキから取って。
「あぁ。ただいま、華恋」
「おかえり。夜ご飯は食べてきた?」
「…あぁ。華恋、遅くまで俺のことを待ってなくていいんだぞ?早く寝ろ」
夜ご飯を食べたなんて嘘。
「うん…もう部屋戻るね…」
本当はもっと頻繁に来ればいいんだろうけど…
まぁここには姉ちゃんがいるし。
***
ー朝ー
ふと目が覚めた時。
そこは天国でした。
こんな俺が言うことではないかもしれない。
けど。
「───天使がいる」
「誰が天使ですって?」
うわっ、起きてたのかよ
こいつは俺の姉ちゃん。自分で言うのもなんだが、俺は極度のシスコンだと思う。
姉ちゃんに華恋、もう一人いる兄に弟。
家族が大好きだ。
…こんなこという柄でもないけどな。
「おはよ、姉ちゃん」
「ん、おはよ。きいちゃん。昨日は何時に帰ってきたの?」
…姉ちゃんは時間を大切にしたいらしい。
あんまり俺と一緒にいる時間が無いから帰ってくる日は言ってくれ、と言われているが…
華恋に伝えておいてくれ、って言ってるのに華恋は言うのを忘れるらしい。
「昨日は…12時よりは前」
「随分とアバウトね。
そんなことより、今日はうちでゆっくりしていくの?」
自分から聞いたくせにそんなこと、ってなんだよ。
「あぁ。今日は特に予定がないからな」
「そう!よかった、買い物に付き合ってくれない?」
「…しょうがねぇな」
「嬉しいくせに」
「………」
図星で何も言えなくなる。
「ほら、用意して」