あなただけの騎士
Midnight


路地裏に無駄に色気が漂っている男と顔の原型がとどめていない男が一人。



ガスッ

「うぅっ…、わ、悪かった!なんでも言うから!もう許してくれっ!!」


男は曲がらない足を無理に曲げ、頭を地面につけた。所謂、土下座。

…滑稽だな

「さっさと吐かねぇてめぇが悪ぃんだろうが。お前の同級生の安藤杏美について話せ」


男の姿は青のパーカーを着ていて、下は黒のスウェット。フードを被っているため、顔は見えないが、全身から滲み出るフェロモンが周りを魅了させていく。


「あ、杏実は、身長153cmで、体重は「そういうことを聞いてるんじゃねえんだよ。なんだよお前。馬鹿なのかよ」

はぁ、と呆れたようにため息をつく。


「杏実は前までは…中学の頃はただの大人しい、女らしいやつだったんだよ…」

「まともに話せるんじゃねえか」

「話の腰を折るんじゃねえよ!!」


さっきまで喧嘩してたヤツらがコントのような言い合いを始めた…

なんと表せばいいのだろうか…


あぁ、そうだ。

「カオス」

「お前が言うな!」

…なんてことを言いに来た訳ではない。


「続き」

「お前がっ…、!っ、なんでもねぇ。


…杏実は、今は周りから見たら普通の大人しい女子。だけど…裏では族の姫をしてるんだよ。幼馴染を無理矢理脅して、な」


男は目を伏せ、怪我をしているにも関わらず、手で地面を思いっきり叩く。


「…族の名前は」

この男がどんなことを考えていようと、俺には関係ねぇ。
心がねぇ訳じゃねえ。
ただ…

ただっ、俺が首を突っ込んでいいことじゃ…


俺なんかがっ、俺のせいで…っ、


…考えるの、やめよ。

「族の名前は…



Prinzessin」


…あぁ。確か、フランス語で姫、だっけ?


「前までは違う名前だったらしいけど…杏実が変えたらしい。どこまでも女王様気質だよな」


安藤杏実、ね。なんとなく怪しいと思ってたけど…


「もうお前に用はねぇよ」

俺は何も言わずに立ち去ろうとした、が。


「ま、待ってくれ!」
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