あなただけの騎士

野いちご公園に着くと凛桜が拾ったであろう女がブランコに乗り、凛桜と正春、他にも騎士団の幹部がみんな揃っている。

…空気は最悪だ。



「悪い、遅れた」
『おっそおおおおおい!!いつまで待ったと思ってるんだよ!どうせアノコだろ?!わかってたよ!わかってたけどさ!!』


「わかってたなら言うなよ」

『そうじゃねぇだろ?!』


…たまに正春が理解できない。

俺は女の近くに寄っていった。


「お前、名前は?」

『あ、安藤…安藤杏美です…』

安藤杏美(あんどう あずみ)か。
聞き覚えがあるな…


「いい名前だな。凛桜、状況」


『えーっと、この女の子がオオカミくんたちに襲われそうになってたから助けたのー!』
「場所」
『繁華街の南町。南町は荒れてるからなぁ』
「誰」
『あんまり名前も知られてない族の…一応幹部。俺たちの下っ端くんたちよりも弱かったから…うん…』


…騎士団って楽だ。必要以上話さなくても大体は通じてくれる。


「…安藤、だっけ?お前もう、南町に行くなよ。同じ思いをしたくなければな」


『は、はい…』


「わかったならもう帰れ」

『い、いやです!!』

「…は?」

『もう…もう誰にも会いたくないっ!』


…困った。本人が動きたくないならここに放置…という訳にもいかないんだよなぁ


『お嬢ちゃん。今回はたまたま俺たちに助けてもらった。けどな?お嬢ちゃんは心配だが、お嬢ちゃんだけ特別扱いは出来ないんだ』


コイツは水縞蘭(みずしま らん)。
男らしく勇ましい、容姿端麗なコイツはどこにいてもモテる。

彼女の1人くらい出来てもおかしくないが、コイツは溺愛している妹がいるから恋愛はしたくないらしい。


『お願いっ…!もう、あたし、怖くて…!』

そんなことを言われてもなぁ…


『こんなんじゃ学校にも行けない…明日は桃華ちゃんと遊ぶ予定だったのに…!』


桃華ちゃん…?
とうかちゃん…?
トウカチャン…?





「桃華の親友だ」


『へっ?そ、そうですけど…?』

…俺には気づいていないみたいだ。

なら問題は無い
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