その男、カドクラ ケンイチ
翌日
カドクラは7時30分に登校していた。
ウコンの力のおかげで
二日酔いもせず快調だった。
今日から授業が始まる。
カドクラの担当科目は現代国語。
前の学校ではまともに授業することが少なかったので幾分不安だったが、予習はちゃんとしてきた。
(まずは生徒を覚えないと)
ナガノが作成した
2年6組の座席表を見ようと…
座席表がない。
「あれ??」
そして思い出す。
「教卓の中にあるんだった。」
カドクラは6組へ向かう。
グランドでは朝練の声が聞こえる。
「お、あった。」
38名の名前と座席が書いてある紙を教卓から取り出し、しばらく実際の席を見て確認する。
「おはようございます。」
声のするほうを見ると女子生徒が立っていた。
(あ!あいつ‥)
カドクラはピクっとしたが挨拶を返す。
昨日記念すべき初登校日に「あっそ」発言をした生徒だった。
女子生徒は中に入ってくる。
(まさか6組の生徒だったとは。)
カドクラは昨日の時点では気付かなかった。
「カドクラ先生ですよね。」
女子生徒は席に着こうともせず、
カドクラのほうに寄ってきた。
「何してるんですか?」
「座席表を取りにきてて。」
「ナガノ先生って、今月で辞めるんですか?」
「いや辞めるんじゃなくて、産休だよ。」
「子供作って逃げたくせに。
もう帰ってこなくていいですよ。」
(え~!?)
いきなりの問題発言にカドクラは返す言葉がない。
「先生、がんばってね。」