その男、カドクラ ケンイチ




「もう行ってもいいですか。」


ノノムラはカドクラをチラ見する。



「ノノムラ。ムトウ先生は好きで怒ってるんじゃないぞ。」


「自分のことしか頭にないじゃん。」


「携帯ってロックしてあるか?」


「はぁ?」


「あれだよ。パスワード入れなきゃ待ち受けにならないやつ。」


「してます。」


「じゃあ俺に預けろ。」


「絶対嫌。」


「嫌なら授業中いじるなよ。」


「…」



「授業遅れるからもう行っていいよ。」



カドクラはノノムラを促す。









「あ、ノノムラ。」


促しときながら出ていこうとしたノノムラを呼び止める。





「何ですか。」


「黒酢の生徒から俺のこと聞いたってこの前言ってたよな?」


「だから?黒酢の生徒とは関わるなって言いたいんですか?」


「いやそうじゃない。
そいつ、元気だったか?」


「はぁ?」


「それが誰か少し気になるところだけど、そいつが元気そうならまぁいいや。」


「意味分からん。もう会ってませんから。」



「そうか。」






ノノムラは足早に授業へと向かった。

< 109 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop