その男、カドクラ ケンイチ
「もう行ってもいいですか。」
ノノムラはカドクラをチラ見する。
「ノノムラ。ムトウ先生は好きで怒ってるんじゃないぞ。」
「自分のことしか頭にないじゃん。」
「携帯ってロックしてあるか?」
「はぁ?」
「あれだよ。パスワード入れなきゃ待ち受けにならないやつ。」
「してます。」
「じゃあ俺に預けろ。」
「絶対嫌。」
「嫌なら授業中いじるなよ。」
「…」
「授業遅れるからもう行っていいよ。」
カドクラはノノムラを促す。
「あ、ノノムラ。」
促しときながら出ていこうとしたノノムラを呼び止める。
「何ですか。」
「黒酢の生徒から俺のこと聞いたってこの前言ってたよな?」
「だから?黒酢の生徒とは関わるなって言いたいんですか?」
「いやそうじゃない。
そいつ、元気だったか?」
「はぁ?」
「それが誰か少し気になるところだけど、そいつが元気そうならまぁいいや。」
「意味分からん。もう会ってませんから。」
「そうか。」
ノノムラは足早に授業へと向かった。