その男、カドクラ ケンイチ
その日の夕方、緊急職員会議が開かれた。
「こんなことは前代未聞だ!絶対許さん。」
声を荒げているのは体育教師で生徒指導のタケダだった。
「外部の者の可能性もありますね。」
「どっから侵入したんだ。」
「怪しい奴から片っ端に事情聴取すべきだ。」
様々な声が乱れ飛ぶ。
ガラスが割られたことはタケダの言う通り、平穏な堂々秀高校には前代未聞の出来事だった。
「まずは2年6組の生徒から話を聞いたほうがいいかもしれませんなあ。」
この一言で場が一瞬静まり返る。
発言したのは2年生の学年主任 ムトウだった。
「ムトウ先生、今の発言の真意は何でしょうか?」
会議を仕切っていた教頭が尋ねる。
「大体何か騒ぎを起こすのは2ー6の生徒でしょう。」
ムトウは相変わらず嫌味たっぷりに話す。
カドクラが反応する前にエンドーが反応した。
「ムトウさん、もし2年生がやったんなら学年主任が責任取ってくださいね。」
「なんだと?」
「頼りにしてますよ主任。」
目には目を。
嫌味には皮肉を。
エンドーはカドクラに目で『熱くなんなよ』と合図する。
教頭が再び仕切り直す。
「犯人が誰であろうと許しがたいことです。
しかし先生方、くれぐれも決めつけや根拠もなしに生徒を疑うのはやめましょう。」