その男、カドクラ ケンイチ
ーーーー校長室
堂々秀高校第85代校長 アザクラは、コーヒーから乗り換えた紅茶を飲んでいる。
「窓ガラスはさっそく来週から修繕してもらいます。」
アザクラの前に立つ教頭は、今日の報告の最後にこうつけ加えた。
「動揺がありますね。」
アザクラは窓のほうを向いたまま答える。
「ええ。正直私も驚いてます。」
「窓は簡単に直せる。
しかし、窓を割った人間の心は簡単には直せない。」
「仰る通りです。」
「もしうちの生徒の仕業だったとしたら悲しいですね。」
アザクラはティーカップを置き、椅子に座る。
「報告は以上です。」
教頭は手にしていた手帳を閉じる。
「そういえば教頭先生、最近車を見かけませんが、バスで通っているんですか?」
「いやはや。最近どうも運動不足でして。通勤は徒歩とバスにしてます。」
「我々もすっかり年寄りになりましたなぁ。」
「全くです。」