その男、カドクラ ケンイチ
カドクラは屋上を訪れる。
今日もエンドーが煙草を吸っていた。
「よお。1本吸うか?」
「大丈夫です。」
「何か疲れた顔しとるなぁ。」
いつもと様子が違うカドクラにエンドーは朝から違和感を感じていた。
「自分は成長してるのかなって思うことがあるんですよ。」
カドクラは呟くように話す。
「また小難しいこと考えちゃって。」
「1年前、僕が気に入らないって反抗してきた生徒を僕は力で抑えつけました。」
「ああ例の番長とタイマン張った話ね。」
「その時から何も変わってないんです。」
「フゥーー」
エンドーは携帯灰皿に煙草を消す。
「いいんじゃないの。」
「え?」
カドクラはエンドーを見る。
「成長してるかなんて自分じゃ分からんさ。
お前が正しいと思うことを続けてればいいんだよ。」
「・・・」
「お前が黒酢の不良達にしたことは正しかったんだろ?」
「・・・・」
ーーーーー1年前
「ハァハァハァ。」
「………」
「ハァハァハァ
オザキ!しっかりしろ!」
「……離せ…カドクラ。
構う…んじゃねぇ。」
「今病院連れてってやるから。」
「何でだよ…俺は…お前を殺…そうとし…ゲホッゲホッ」
「お前は俺の大事な生徒だからだ!」
「……!」
「よしっ。病院までちょっとだけ我慢しろよ。」
「………………………すまねぇ。」
ーーーーーーー
「エンドー先生。」
「ん?」
「やっぱり煙草1本もらっていいですか?」
「すまん。さっきのが最後の1本だった。」