その男、カドクラ ケンイチ










ーーーーーー



「一体どういうことなんだ!」


職員室では2年生の学年主任 ムトウが声を荒げる。


1時間目の時間に差し掛かっていたが、2年生の担任を中心とした職員が集まって話をしていた。



「自殺したっていうことか!?
なんなんだあいつは。」


「ムトウさん、タカハシはまだ生きてる。
それにまだ自殺って決まったわけじゃない。」



エンドーが反論する。





「屋上から落ちたんだぞ?自殺じゃなくて何なんだ!
カドクラはどこだ!?」


「まだアザクラ校長と病院にいます。」


「意識不明の重体らしいじゃないか。
助かる見込みがどこにある?

カドクラめ。この責任をどうするつもりだ!」




さっきから言いたい放題のムトウの暴言についにエンドーがブチっとなる。




「て・・」

『てめぇ、ぶち殺されてぇのか。
これ以上何か言うと血見るぞ。』


と言って胸ぐらを掴もうとしたエンドーの腕を誰かが抑えた。




「ムトウ先生落ち着いて下さい!
他の先生方も。」



エンドーの腕を掴み、前に出たのは保健室の先生 モモイだった。



「私たちが冷静でいないと生徒の子達に余計不安が広がりますよ!

今はタカハシ君が一命を取り留めることを信じて待ちましょうよ。」



モモイは涙目で必死に訴える。





意外な人物が発言をしたことで、職員室に冷静さが戻り始める。




「じゅ、授業行きましょうか。」


1人の教師が動くとつられて一斉に動き出した。



「・・・」

ムトウも黙ったまま授業に向かう。







モモイはしばらくエンドーの腕を掴んだままでいた。




「エンドー先生…お願いだから落ち着いてよ…」



「・・・・・・ごめんモモちゃん。」




緊張の糸が切れたのか、モモイはその場で泣き出した。






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