その男、カドクラ ケンイチ
3時間目を終えて職員室に戻ったカドクラを学年主任 ムトウが待ち構えていた。
「自殺者を出した担任がどうなるか、分かってるんだろうな。」
「どんな事になろうと、受け入れます。
僕は逃げません。」
「大した度胸だ。
・・・・早く病院に行きなさい。」
「え?」
「今さっき、アザクラ校長から連絡が入った。
タカハシ君の意識が戻ったそうだ。」
カドクラの全身に鳥肌が立った。
安堵と喜びが爆発し、逆にしばらく声が出ない。
「で、でも授業が・・」
「いいから行きなさい。君は彼の担任だろう。
これはアザクラ校長の指示でもある。」
ムトウはポケットから車のキーを出した。
「少しでも傷つけたら全額弁償だぞ。」
「ありがとうございます!」
カドクラは飛び出すように走っていった。