その男、カドクラ ケンイチ
夕暮れが広がる空。
堂々秀高校 校舎の屋上にはカドクラとエンドーがいた。
「そういうことなら日本史は俺に任せとけ。」
「ありがとうございます。
よろしくお願いします。」
カドクラはさっそくタカハシの夏休みの補習の段取りを組んでいた。
「数学はどうするの?
ムトウさんが協力してくれるとは思わんけど。」
エンドーはプカプカと煙を吐く。
「でも僕はムトウ先生に頼みますよ。
断られたってやっぱり数学はムトウ先生にお願いしたいんです。」
「そういうところは相変わらずだな。」
グラウンドからは野球部のかけ声が響く。
「それにしてもホンットよかったな。
タカハシが大事に至らなくて。」
「今回の事は一生忘れません。
僕はまだまだ教師として一人前じゃないことを教えられました。」
「あたりめぇだ。
俺から見りゃお前なんかまんだ半人前だよ。」
エンドーは冗談混じりに笑う。
「もう1学期も終わりか。」
「早かったです。」
「でもまぁ、もうお前は立派な6組の担任だよ。
ナガノさんが手を焼いた生徒達を、お前は見事にまとめ上げた。」
「僕は特別何もしてません。
生徒達が付いてきてくれただけです。」
「最後の1人、タカハシもな。」
「タカハシが戻ってきたら、改めてスタートです。」
エンドーは煙草を消す。
「そろそろ戻るか。」
「はい。」
2人は校舎の中に入っていった。
カドクラにとってあまりにも濃く、あまりにも激しい堂々秀高校での1学期が終わろうとしていた。
第25章 完