その男、カドクラ ケンイチ
やがて2人が見下ろす視界に、自転車をこぐ生徒の集団が写った。
続々と校門をくぐり、学校の中へ入ってくる。
「あぁ帰ってきた。」
エンドーが呟く。
「…」
モモイは集団の最後尾で自転車をこぐ男を見つめる。
「どこ行ってたんですか?」
モモイはエンドーに尋ねる。
「ナガノ先生の所だよ。」
「あ~なるほど。みんなでお見舞いに行ってきたんだ!」
自転車の集団が全員校門に入るとその場で止まり、何やら盛り上がっていた。
「モモちゃんさぁ。」
エンドーがその盛り上がりの中心にいる男を見ながら煙草の火を消す。
「なんですか?」
「最近、恋人できたやろ?」
「・・な!なにを言ってるんですか!」
「分かりやすいんだよなぁモモちゃんも。」
「じゃあ……誰か当ててみてくださいよ。」
モモイは頬を少し赤らめながら開き直る。
「誰が私の恋人ですって?」
「当てたら口止め料で焼き肉ね!
…まぁ既にあいつにも言ってあるけど。」
「え~~!?」
「その男の名前はな・・・!」
「いやー!恥ずかしいからやっぱりやめてください!!
はい、その通りです!!」
「ハハハハ。」
エンドーとモモイはわざとらしい一連のやり取りに、思わず同時に吹き出した。
その男、カドクラ ケンイチ 終