その男、カドクラ ケンイチ
「ねぇ先生!」
いきなり声をかけられたカドクラはビクッとして後ろを振り返る。
今日の面談を終えて職員室に戻る途中だった。
「なんだオオシマか。」
立っていたのは6組の女子生徒 オオシマだった。
「先生、うち明日早く帰りたいから今日のうちに面談してよ。」
今日で男子全員が終わったので明日から女子に入る。
「あ~いいよ。っていうかわざわざ待ってたの?
言ってくれれば日にち変えたのに。」
2人は教室に入る。
「彼氏とは仲直りした?」
「一応。」
「あんまり夜に出歩いちゃダメだよ。危ないし。」
「すっごい偶然でしたよね。」
このオオシマはちょいちょいタメ口きいてきたり、
ゴールデンウィークの見回りで鉢合わせたりと
カドクラにとってある意味一番関わっている生徒である。
「ねぇ先生、うちのクラスはどう?」
カドクラが生徒に聞いてきたことを逆に問われる。
「え~。う~ん。でも男子と面談してみて、なかなか個性豊かな子ばっかで楽しそうかな。」
「だよね!」
「ダテなんかプリントなくしやがって、すごいグダグダになっちゃったよ。」
「ゆーへいウケる。」
「ていうかお前が俺に質問してどうする。始めるよ。」
たびたび話が脱線してしまうが面談を進める。
「じゃあ最後に何か悩みとかある?
進路のことでもいいし、何でもいいよ。」
「ん~ないです。」
「ほんとに?」
「最近すぐ風邪ひくぐらいかな。」
「そっか。」