その男、カドクラ ケンイチ






翌日


カドクラは業後にオオシマを呼び出した。







「今日は早く帰るって言ったじゃないですか。」


「昨日の面談の続きだ。3分で終わる。」


「何ですか。」





「オオシマ、腕見せてみろ。」


「はぁ?」


「左腕まくってみろ。」


「嫌です。セクハラですか?」


「俺は年下には興味ない。
見せたくない理由でもあるのか?」






さっきから真剣な表情のカドクラに押され、オオシマはしぶしぶ制服をまくる。


モモイの言う通り そこには確かに痕があった。






「誰にやられた?」


「何がですか?」


「それ煙草を押しつけられた痕だろ。」


「違います。ただのアザです。」




カドクラは自分の右腕の袖をまくりオオシマに見せた。



「昨日エンドー先生に実際に煙草を押しつけてもらった。
俺のこの痕とお前の左腕の痕、何が違うって言うんだ?」






・・・・・







しばらく静寂が包んだあと、
オオシマが口を開く。


「エンドー先生って煙草吸ってたんだ…。」


「誰にやられた?」


「…」


「オオシマは何も悪くない。
俺はオオシマに怒ってるんじゃないんだよ。」






いつの間にかオオシマの目に少し涙が浮かんでいた。


「本当に煙草の痕か確かめる為に自分の腕に押しつけるなんて、先生って馬鹿ですよね。」


「馬鹿でも生徒は守れる。」


「ありがとう先生。
でも…言えません。」



「・・・そうか。
分かった。ごめんな、用事あるのに。」





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