その男、カドクラ ケンイチ


しばらくすると玄関のドアが開く。


中から出てきたのは母親らしき女性だった。



「あ、はじめまして。カドクラと申します。」


「同じく2年5組の担任をしておりますエンドーです。」


「ユリコの母です。お世話になってます。」




(若いな・・)



茶髪でスタイルも良く、
端から見ると女子高生を持つ母親に見えないオオシマの母を前にしてカドクラは緊張が増す。





「立ち話もなんなので、どうぞお入りください。」


2人は家の中へと招かれる。










「いやぁ、綺麗なお母様で。
ユリコさんが羨ましいです。」


さっそくエンドーが鼻の下をのばす。




「そんなことないですよ。
もうこの前40になったばっかりで。」




カドクラとエンドーはリビングのソファへと案内される。





「今お茶を出しますのでお掛けになってください。」


母親はキッチンへと向かう。






「あぁいけね。」

エンドーが立ち上がり母親を追うようにキッチンへ向かう。





「あの、これつまらないものですけど、僕の地元の特産品です。」


エンドーが袋を手渡す。




「まぁわざわざありがとうございます。」


「そのまま食べてもおいしいんですけど、
ちょっとコンロで炙って七味をかけて食べるとめちゃくちゃうまいです。」









「エンドー先生、目的忘れてませんか?」


キッチンから戻ってきたエンドーに小声でカドクラが囁く。



「俺はお前の付き添いなだけだよ。」








「お待たせしました。何もありませんが。」


オオシマの母親が紅茶を運んでくる。




「あの~。
ユリコのことで何かあったんですか?」


母親が尋ねる。





「実は…単刀直入に申しますと…」


カドクラは先日のオオシマの腕に煙草の痕があった話をした。






「それで本人は誰にやられたかを話したがらなくて。
お母様は何か心当たりがないかと思いまして。」


カドクラが話し終えるとエンドーが口を開く。


「ちなみに今日ユリコさんはお出かけですか?」



「あの子、最近休みの日は家にいなくて…
歳上の恋人ができたみたいで家に帰ってこない日もあります。」






カドクラはこのオオシマの『彼氏』に疑いの目を向けていた。


「お母様はその恋人と会ったことはありますか?」


「家に迎えに来たことがあった時に顔をちらっと見た程度で…」




エンドーがまた横槍を入れる。

「そういえばご主人もお出かけですか?」


「主人は1年ほど前から単身赴任をしていて、3ヶ月に1度くらいしか帰ってきません。」





カドクラはエンドーに目で“話をそらさないで”と訴える。

だがエンドーは気づかないふりをして立ち上がる。


「お手洗い借りていいですか?」




(だめだこりゃ。)


カドクラは母親と2人で話を進める。


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