その男、カドクラ ケンイチ
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夜も更け、交通量も減ってくる頃。
ガチャリ
オオシマ ユリコは帰宅する。
今日は彼氏が夜勤のため泊まることができなかった。
そそくさと自分の部屋がある2階へ行こうとした時、
「ちょっと待ちなさいよ。」
リビングにいた母親に呼び止められる。
「な、なに?」
バシッ
母親は間髪入れずビンタを食らわす。
「今日あんたの担任が来たわよ。」
「え…?カドクラ先生が…」
「あんた、殺されたいの?」
「…ごめんなさい。」
バシッ
再びビンタを食らわせた母親は煙草に火をつける。
「月曜日、彼氏にやられたって言いな。」
「いや…それだけは嫌!」
その言葉を聞き母親はオオシマに向かって再び手を振り上げる。
ピンポーン
その手が振り下ろされそうになるその時、
インターホンのチャイムがこだました。
「ちっ」
インターホン越しに母親が出る。