その男、カドクラ ケンイチ
「夜分遅くにすみません。カドクラです。」
まさかの訪問者に母親は一瞬固まる。
「何時だと思ってるんですか?」
「あ、ごめんなさい。エンドーです。
どうもお手洗い借りた時に僕の家の鍵落としたみたいで。」
「そんなものありませんでしたよ。」
「もうここしか心当たりがなくて。
ちょっとだけ探させてくれませんか?」
「帰ってください。」
再びカドクラが喋る。
「昼間の話の続きもしたくて。」
「こんな時間に非常識ですよ。
さっきからなんなんですか一体。」
ドタドタ
オオシマが玄関まで走り、鍵を開ける。
ガチャリ
「オオシマ・・
帰ってたのか。」
カドクラとエンドーが中に入る。
涙をうかべるオオシマを見てカドクラはハンカチを差し出す。
「お母さん、
俺はお前を許さない!」
カドクラは靴を脱ぎ捨て母親のもとに向かった。