その男、カドクラ ケンイチ
「待てカドクラ!」
今にもオオシマの母親に殴りかかりそうな勢いのカドクラをエンドーが止める。
「落ち着け。俺達は警察じゃねぇ。教師だ。」
「だから何ですか!?僕の大事な生徒が虐待を受けていたんですよ!」
オオシマの母親はうつむき沈黙している。
そこにエンドーが歩み寄る。
「お母さん、実は勝手ながら昼間に単身赴任先のご主人に連絡をしました。
事情を説明したら“すぐに戻る”って言ってくれました。
多分あと1時間もしないうちに帰ってきます。
娘さんは大切な家族じゃないですか。自分の過ちをよく考えてください。」
エンドーの冷静さにカドクラも次第に落ち着きを取り戻す。
さきほどからずっと泣いているオオシマのもとへ行く。
「もう大丈夫だからな。ごめんな怖がらせて。」
オオシマは首を横にふる。
「先生…なんで…なんで来たの…」
「俺はさ、お前の担任だよ。ちょっと頼りないけど。」
カドクラはオオシマと
エンドーは母親と
それぞれ話を続けた。
しばらくして父親が帰ってくる。
カドクラとエンドーは改めていきさつを説明し家をあとにした。