その男、カドクラ ケンイチ
21時を過ぎた頃
カドクラはまだ学校にいた。
当初のテスト範囲に間に合わないクラスがあることが分かり、一部の問題を作り直していた。
プルルルル
電話が鳴る。
「はい。堂々秀高校です。」
「…」
「もしもし?」
「…」
電話の相手は無言だった。
「もしもーし。切りますよ。」
「…」
ガチャリ
カドクラは電話を切って仕事を続ける。
プルルルル
再び電話が鳴る。
「はい。堂々秀高校です。」
「…」
カドクラはさすがにイラっとなる。
「さっきからいい加減にしてくださいよ。」
「…ダテ…」
電話の向こうで少しこもった声が聞こえた。
「はい?」
「ダテ ゆーへい
こいつの名前。」
「ダテはうちの生徒ですけど。
どちら様ですか?」
「末丸公園。」
「公園?」
「…早く来ないとこいつ、死ぬよ?」
「お前・・ダテに何をした!?」
ガチャリ ツーツー
電話が切れた。
“末丸公園”
場所までは正確に分からないが“末丸”といえば、
傷害事件があった地区の名前である。
カドクラは職員室を飛び出した。