その男、カドクラ ケンイチ
ガラガラ
「遅くなりました。」
カドクラが中に入る。
「お疲れ様ですカドクラ先生。
タケダ先生、一呼吸置きましょう。」
教頭の提案で頭に血が上りきっているタケダが退室する。
カドクラは教頭から昨夜の状況を説明される。
ダテがバイト終わりにアカイに連絡を取り、
その後アカイの家の近くのあの公園で会っていた、
ということであった。
しかし、傷害事件が起きた地区で
『夜は外出を控えるように』と学校から注意があった中でのこの行動は頂けない。
「もういいですか帰っても。」
ダテは苛立っていた。
「アカイ、調子はどう?」
カドクラはアカイに目をやる。
「もう大丈夫です。」
「教頭先生、この2人は特に校則を違反していたわけではないので勘弁してやれませんか。」
カドクラの意外な言葉にダテとアカイは一瞬驚いた。
「担任としてそれでよいなら私からは何もありませんよ。」
教頭が微笑む。
カドクラはダテのほうに向き直る。
「ダテ、俺と一緒にタケダ先生に謝りに行くぞ。」
「何でだよ?」
「さっきから目上の人に対して取る態度じゃない。そこはお前に非がある。」
「あんな上から物言うことされたら怒るだろ。」
「むかつくことがある度に怒るほど子供じゃないだろ?
俺に大人の対応見せてみろ。」