その男、カドクラ ケンイチ
「お疲れ様です。」
屋上に来たカドクラは煙草を吹かすエンドーを見つける。
その足元には封筒が落ちていた。
「銀田一少年の事件簿って読んだことある?」
「“お爺様の名にかけて”って言っていろいろ事件解決する漫画ですよね。」
「俺がそれの大ファンって知ってた?」
「いや、知りません。
っていうか用は何ですか?」
「まぁ座れ。」
2人は地べたに座り、エンドーは封筒の中から写真を取り出す。
例のストーカーがアカイに送った何百枚という写真だった。
「俺さ、一枚一枚全部チェックした。」
「ま、まさかおかずにしたんじゃないでしょうね?」
「そんでよ・・」
「ちょっと!否定してくださいよ。」
エンドーは否定しずに話を続ける。
「これ、見てみ。」
エンドーは束の中から20枚ぐらいの写真を渡す。
どれも制服姿のアカイを隠し撮りした写真。
「何か写ってるんですか?」
カドクラは全部見たがよく分からない。
「まず一緒に写ってるものが、全部違うだろ?」
だいたい道路を走っている車が一緒に写っているのだが、確かに違う車が写っている。
また、雨の日で傘をさしている写真もあった。
「何日も何日も隠し撮りしてたってことですよね?」
「そうだな。
でも俺が気になったのは背景とアングルよ。」
「?」
「よく見てみろ。
確かに違う日に撮影されてる感があるけど、
後ろに写ってる風景やアカイの角度、全部同じだろ?」
「・・・・・あ、本当だ!」
カドクラもようやく理解する。
コンビニ、街路樹、電柱
エンドーが渡した20枚の写真には同じ風景が同じアングルで写っていた。
「決まった場所から撮影しとるんだよ。」
「なるほど~。」
「そんだけ。」
エンドーは立ち上がる。
「ちょ、ちょっとエンドー先生。
これどこから撮ったか調べたら分かるんじゃないですか!?」
「場所が分かったところでストーカーは見つけられんだろ。」
「でも手がかりがあるかも・・・。」
「いいかカドクラ。
オオシマの時にも言ったけど俺達は警察じゃないんだからな。
仮に場所が分かって、そこから疑わしき人間が分かったところで、
『あなたはストーカーですか?』って聞いて否定されりゃあ終わり。
捕まえたきゃ警察に頼め。」
「悪い奴を捕まえるのに教師も警察もないですよ!」
「じゃあどうやって捕まえんのよ?」
「え~・・・・ア、アカイに襲いかかるストーカーを現行犯で捕まえるとか。」
(自分の生徒をそんな危険な目にあわすわけにはいかない。)
カドクラは冗談のつもりで提案した。
「いい案だ!」
エンドーはがっつり食い付いた。