その男、カドクラ ケンイチ
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「さようなら~」
「先生さいなら。」
「さようなら。気をつけてな。」
日も沈み辺りはすっかり暗くなる。
カドクラは部活を終えたアカイと一緒に学校を出る。
「何で今日なんですか?」
アカイはカドクラに尋ねる。
「いやぁ~俺もよく分からないんだけど、エンドー先生が今日だって。」
「今日何もなかったらまたやるんですか?」
「俺は何回も付き合うよ。」
2人は自転車をこぎ続ける。
「先生。」
「うん?」
「私、っていうかうちら。カドクラ先生のこと、最初良く思ってなかった。」
「え?なに?俺ってみんなに嫌われてるの??」
アカイのいきなりの告白にカドクラは動揺する。
「みんな学校の先生に対して良く思ってないの。
でもカドクラ先生はちょっと違う気がする。
ユリコもゆーへいもカドクラ先生なら信じてる。」
「そっか。アカイは?」
「私も信じてる。先生には本当に感謝してる。」
カドクラはその言葉に安堵する。
「でも…まだタカハ…」
ピリリリリ
カドクラの携帯の着信音が鳴る。
アカイがまだ何か言いかけたがカドクラは携帯を取り出す。
2人はその場に止まる。
「はい、カドクラです。
あ、教頭お疲れ様です。
ええ。いままだ途中です。
え……?
ダテが練習中に大ケガ!?」
カドクラの声が一段と大きくなる。
「いまどこに?
………
分かりました。僕も向かいます。」
カドクラは電話を切る。
「ゆーへいがどうかしたんですか?」
アカイが尋ねる。
「部活中に怪我して今病院に向かってるって。
ちょっと俺も病院行ってくる。」
「え…じゃあ私も。」
「いや、お前はもう帰れ。すぐ家だからもう大丈夫だろ?」
「…はい。」
「気をつけてな。」
カドクラは急いで学校へと引き返す。
アカイは独りで自転車をこぎ出した。