その男、カドクラ ケンイチ
チリン チリン
時間も遅く、前はほぼ暗闇。
アカイ ショウコは自転車をこぐ。
ずっとカドクラに送ってもらっていたので、久しぶりに独りでの帰宅になる。
人通りも少ない帰り道。
ストーカーの存在を知ってから、アカイはこの道が怖くてしょうがなかった。
しかし、自分の悩みを正面から受け止め、仕事そっちのけで毎日付き合ってくれるカドクラのおかげで勇気が沸いた。
そんな教師に初めて出会えた気がする。
だからこそ先程カドクラに感謝の意を伝えた。
チリン
いつの間にかアカイの後ろでも自転車の音がした。
シャー
だんだん音が近づいてくる。
道幅はあまり広くない。
対向車が来ないうちに抜かしてもらおうとアカイは少しスピードを緩める。